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中標津にて

2月10日、3日目。本日の目的地、中標津の開陽台へ向かう。弟子屈から中標津へ向かう道はミルクロードと称される直線道路を通る。北海道は東北部の知床から南部の襟裳まで長い山脈帯が延びていて、地形的に大きく分けられる。一口にこの山脈に囲まれたこの地域を十勝と呼び、主に酪農を営んでいる農家が多い。夏は飼料の匂いがぷんぷんする土地柄。この冬はいわゆる銀世界が広がっている。
弟子屈では空をしっかりと覆っていた雲が、次第に薄くなっている。いい傾向。開陽台に着くまでには日も差してくるようになった。
弟子屈から出発して1時間30分。中標津町、開陽台展望台へ到着する。

早速展望台に上がる。
開陽台のキャッチフレーズは「視界330度」の「地球が丸く見える」「地平線」。日本では水平線は多くで見られるが地平線が見えるとなると数少ない。しかも、ここ開陽台が他の地平線が見える展望台と違うのが、標高271mで山脈の裾野にある開陽台から平野が地平線の奥まで遮るものなく続いているところ。さらに、その見える平野が、根釧台地と呼ばれる格子状の防風林で区画された酪農地。明治の北海道開拓以降各地で作られた格子状の農地と防風林も広く見渡すことが出来るのはここ開陽台のみとなっている。

早速僕のたびの必需品、カメラを取り出して構える。だけど、いくらファインダーを定めようとしても納得した構図でシャッターを押せない。ここ開陽台の魅力はカメラでは写し取れないほど広くて大きい。3年前、展望台の裏にキャンプをした僕は、澄んだ夜空に瞬く星と幾筋もの流れ星に心洗われて、早朝地平線から昇り、広い大地を真赤に染める朝日に感動した。開陽台の凄みはそんな形に残せないところにある。

かつて開陽台は地元の人しか知らない地だった。それがやがてクチコミで広がり、この地にいつしかオートバイ乗りが集まるようになった。景色以外何もないこの地で夜空に夢を見て、地平線に感動し、手前の直線道路で遊ぶ。バイク乗りの聖地と呼ばれるようになった北海道で、開陽台は先駆的象徴なのだ。例え今ここに一人でいても、ここを訪れた多くの旅人と繋がっている、そういったいい気分になる。

僕が開陽台を訪れたのはこれで3度目。3年前に来たのが2回目。最初は2002年、オートバイを買って初めて旅をした時。もう5年も遡る。
5年の間にいろいろな旅をした。実を言うと初めて開陽台に来たときはここの魅力があまり分からなかった。でも旅も上手くなったのか、今ではここがどれだけすごいかよく分かるし、そこで改めて5年前を振り返ると、ここに来たときの、あの時に抱いていながらも言葉に出来なかった、そして自覚していなかった気持ちを思い返すことが出来る。5年前、初めての旅をしていた僕は、自分は旅人などと称して嘯きつつ、実は辛くて帰りたがっていた。そこで家へ帰る最後に訪れたのがこの開陽台だった。言ってみれば情けない自分が来た場所。日本中を駆けずり回って行き着くところはこういう場所なのだ。
開陽台の景色を眺めながら、僕は5年間の軌跡を辿る。

民宿地平線に宿泊。明日の朝日を見ようと思っていたから開陽台最寄の宿を選んだ。ここの主人は40年前に開陽台に惚れてここに移住し、民宿を始めたという兵。開陽台を見るためだけにここに来たと言ったら意気投合。ビールを奢ってくれて、地図や昔の写真を引っ張り出して開陽台の魅力について熱中して語ってくれた。40年たった今でも開陽台に感動するという主人。ここにまた一人素敵な旅人を見つけた。宿泊者は自分一人だったが楽しい夜。天候はまた悪化して夜空鑑賞も明日の朝日も諦めなければならなかったが、それはタイミングというものだし、ここ開陽台でまた素敵な思い出が1つ増えた。
この旅は折り返しを迎える。

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