- 2008/02/15 23:46
- 本のお話

「氷点」を旅する
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本サイトで何かと話題にしている「氷点」ですが、その関連本の一冊。氷点を旅するとありますが、映画やドラマのロケ地を写真などで紹介するという類の本ではなく、原作者の三浦綾子さんが氷点の馴れ初めやエピソードを語ったり、そのほかに三浦文学にはなくてはならない夫の三浦光世氏や三浦氏に縁ちかい方の紀行文、他の作者の氷点の分析などが綴られている、言わば文字の「氷点」旅行といった内容になっています。
当時まだ素人だった三浦綾子氏が原稿用紙1000枚、懸賞金1000万円(1960年代のお話で、破格です)という懸賞に挑み、職業作家を押しのけて入選したという氷点。この1000枚を1年掛けて書いたということです。1000枚といえば単純に計算して1日1000字。それを1年続けてこつこつ書く。1年といえば短くとも長く、少なくとも時勢も変わるし様々に影響を受けて考え方も変わるもの。それでも氷点を読んでみると全く中心軸のぶれのない物語ですよね。その辺りに精神力の強さを感じます。
氷点のテーマは原罪。病院を営み、何一つ不自由ない家庭がひょっとしたことから不幸を背負い、いがみ合っていく。様々な裏切りと葛藤の中、「私だけは汚れなく生きていく」という決意をする陽子。そんな陽子ですら自分の原罪(=氷点)に気づき絶望する、というあらすじ。この陽子の様な人にも原罪があるというテーマが、実際読者には陽子は「けがれない」し「かわいそう」で継子いじめの夏枝には「ひどい人間だ」という反響が。まぁ、原罪はキリストの教えで日本人にはこの概念がなく、普通の日本人が読んだらまぁこうなります。その点はこの本に収められている文のとおり三浦綾子氏も「原罪を読者に伝えられなかった」旨の発言で、多少悔いているようですね。ですが、逆に原罪丸出しの小説だったらこれだけ賞賛されていないはず。そのテーマを見事オブラートに包んだ手法に感じ入ります。人物のキャラクターや舞台設定は勿論のこと、どんな理想的なコミュニティーにもある盲点や残酷な人間という厳しい視点とその上で琴線に触れる眼差し。一級品の一言です。
氷点を読んだ方はこの本を是非。氷点を読んでいない人はまずはそこからどうぞ。損はさせません。
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