- 2009/01/17 00:11
- 本

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
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1969年〜72年。著者は直木賞作家で文化勲章を受賞した司馬遼太郎。いわずと知れた歴史小説家の大御所ですね。司馬作品の代表作の一つに数えられ、NHKで2009年にドラマ化することが決定している本作。読む気になったのは、このドラマの前に読んでおきたかったのと、松山行きを決めてからですね。本当は旅の途中のお供にしようかと思っていたんですが、当然諦めました。文庫本にして8冊。長編といってもここまでだと思っていなくて、早速挫折しそうでしたが、全部読みましたよ。一つの話で5冊くらいなら読んだことがあったんですが、8冊ってのはさすがに今まで読んだことなかったですね。
その歴史の舞台は明治時代の日露戦争。それで主人公は秋山好古と真之の兄弟と正岡子規。日露戦争と言えば、この本を読むまでは高校の教科書の1ページ分くらいの見識しか持ちえていませんでした。3人の主人公も辛うじて正岡子規を知っているくらいですね。もちろん知っているといっても名前くらいなもので、あとはあの坊主頭の横顔の肖像くらいなものです。月並みですが、この本を読んで改めてこの歴史の一過程でありながら重要な局面であった日露戦争の重要さを知った次第です。
とりわけ気を引いたのが作品の大テーマである「日本人とは何か」ということに対する綿密かつ詳細な記述ですね。すべてはそのテーマにあって、その中でこの時代を歴史小説として書いている。歴史小説には大きく史実に忠実なものと、書きたいテーマ、例えば恋愛とか家族愛とかがあって、そのために歴史から舞台を借りてくるようなものの2つに大別できると思うんですが、歴史小説はあくまで小説であって、前者は小説としての面白味に欠けて専門書を読んだほうがいいといえて、また後者は物語の整合性上架空の人物が出てきてしまうため、面白くても歴史小説とは呼べないものになっている場合が多く、今まで歴史小説を読んで満足をしたことがなかったのですが、本作はその両方が持つ魅力を持ちつつ欠点も消しているすごい本ですね。読んだ方ならお分かりだと思うのですが、相当に史料を調べ上げた形跡がありますし、その上魅力的なテーマを見事に日露戦争という歴史の上に成り立たせています。司馬氏から言わせるとテーマのためには無名の主人公を挙げなければならないといったところかもしれませんが、これも見事に成功。読む側はもちろん納得。まさに一偉業。これ以上ないといった印象で、さすがにこれを見せられると多くの歴史小説家はお手上げじゃないでしょうかね。

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さて、そのテーマの日本人とはなんたるや。諸外国の圧迫を受けた幕末から明治国家の誕生から日露戦争、そしてその後の敗戦という歴史の時間性の中から見出す日本国家のありようの記述は目からウロコでした。今これを読んでいるみなさんも私も日本人と生まれたからには国家を負うことは運命的なものであるわけです。またこのテーマはいかに生きるかということにおいても、いわゆる戦後の日本の歩みやこれからという未来にとっても示唆に富んだもので、もちろんその国家論と関係なしに豊かであって嫌世的な社会を地域今をどう生きるかまで導くことができます。私自身も、よくそんなに日本を旅するなら外国にいけばとよく言われるのですが、その興味は私と私たちの住む日本であって、私がいかに生きるかであるわけです。私の知りたいことをこれだけ明確に述べているメディアがあるとは。今この時期にこの本と出あえて本当に良かったですね。余談ですが、とある昔、酒を飲みながら、ある人間と今の日本はいつから出来上がっているのかということで激論を交わしたことを思い出しました。私は幕末明治と主張して、相手は戦後の経済の成長だと主張。視点自体が違うのですが、私しゃ経済に興味がありませんので。お金に頓着だといわれると完全なる語弊なのですが。
今までわたしが呼んだ司馬作品といえば「街道をゆく」数冊だったのですが、今後はさらに長編を狙ってみようかと。それとドラマも期待ですね。脚本を担当する予定だった野沢尚が半ばで自殺してしまい、一時頓挫していたとのことですが、もうキャストも決まって撮影もしているとのことで、楽しみです。何でも秋山兄弟は阿部寛と本木雅弘、正岡子規は香川照之ということで、なかなかのところを見せていますね。私は野沢作品のファンなのでそれは残念でしたが、いいドラマ作ってもらいたいと思います。

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