- 2009/03/02 23:59
- 本

となり町戦争 (集英社文庫)
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2004年初版。三崎亜紀著。ちょっと前に記事にした同名映画の原作本となります。本作で小説すばる新人賞を受賞。直木賞候補にもなったという一作。どう見たって字面からして女性の方かと思いましたが、男性の方だそうで。何でも市役所職員という経歴の方で、なるほどな、というところですね。見事な皮肉でした。
魅力はなんといっても物語の世界観に繋がる設定。となり町との戦争。見えない戦争というものに、参加する、ということ。それはまさに対岸の火事を眺めているようなものであるわけですが、実はそちらのほうが戦争という恐ろしさを伝えているのかもしれません。私たちは少なくとも60年程戦争をしていませんね。この国のほとんどの人が戦争を知らない。戦争と言えばニュースで見るくらいなものです。この本はまさにそのわたしたちの側、傍観者の側そのままの戦争を描いているわけです。
それを、恐らく著者の得意分野の、お役所体質という視点から描く。業務のために、即ち結婚してしまうような面白さがあって、皮肉がある。この本に描かれる妙な道理が戦争を起こして、そして、戦争の是非より戦争の利に任せてしまう民衆がいる。かなり高いところまで話をもっていったなと。とてもいいですね。
惜しいなと思ったのが、もうちょっと戦争と2人の関係を関連付けるところ。設定で近づけたのはとてもいいんですが、ラスト辺りがちょっと物語と離れていたような気がします。とにかく設定がいいんですよね。この設定の良さは、東野圭吾や万城目学とかに通ずるところがあるかなと。そのあたりは直木賞候補作も納得するんですよね。逆に、ラストのあたりの文体はとても良かったんですが、そこらがむしろ純文学っぽくて、イマイチ統一感を欠いたかなと。どちらにしろって事でなくて、むしろこの先さらに完成した物語ができたときはとてもいいものが出来るのではないかという感想ですね。器が大きくて、まだ満杯になっていないという印象です。的をちょっと外した面白さとか、ぼんやりしたものを表現するというのと、不明瞭であるというのは違いますよね。
そういう意味では映画の方はその不明瞭さをしっかりかっちり手直ししていたのが印象。ある意味分かり安すぎるとも言えなくもないんですが、内容をしっかり伝えることと、そもそもの内容がとても高レベルにあったことを考えると、その点映画はよく出来ていたとも言えなくもないです。もちろん映画が後発で原作が先なわけですがね。うんまぁ、映画と原作ともに良いってことで。ちなみにどちらから見てもこの物語は楽しめると思います。ラストの展開が違いますが、映画も物語のポイントを外していませんので、良いかと思います。どっちに転んでよかったということですね。一緒にいようが別れようが、戦争が続こうが物語が終わりまいが、どっちでもということですね。
まぁ、今後に期待です。
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