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サウスバウンド/奥田英朗


サウス・バウンド

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2005年初版。著者は直木賞作家奥田英朗。「空中ブランコ」で直木賞を受賞、本作は受賞後の第1作だったという時間的位置付け。本作は2006年の本屋大賞の2位を獲得したとのこと。なるほど今をときめく作家なのかなと。私は奥田作品は本作ではじめての出会いだったのですが、前に見た映画「イン・ザ・プール」で間接的にお会いしていました。そちらは原作は読んでなかったんですよね。何でもあの松尾スズキ扮する先生はシリーズなんだとかで、直木賞を獲ったのはあの先生が主人公なんだとか。いいですねー。
物語は500ページ超の長編で、前半の東京編と引っ越し先の沖縄編の2編で構成。本筋は家族の物語。なのですがやはり面白いのはその舞台設定ですね。もちろんただ家族愛に目覚めるわけではありません。左翼の夫婦。破天荒の父といわくありげな過去をもつ母。そんなところがちらつきながら展開する長男の物語の東京編に、沖縄編はその父が炸裂する後半となっています。父はあくまで左翼ですが、もちろん左翼のはなしではない。もちろんその逆でもなく、自分を真似るな、自分らしく生きろという父。わたしたちは少なからず組織に属する運命であって、その束縛から逃れることはできません。その組織では罪のない人に意識的にしろ無意識的にしろ圧迫を加えているものです。自由に生きていると思っている方もいらっしゃいますが、それは大きな間違いですね。それでも私たちが生きているのは人間の世界。みんなと楽しく生きたいのも事実です。とりわけ直接的に関わってくる人、一番近いのは家族、友人、愛人となるわけですが、そんな愛すべき人たちと自分の関係は体制の違いも何もないんです。左翼のおじさん、黒木君はそういうことですね。カツを倒すという生の手応えをもっていく東京中野。そして、もっと大きなものと戦う父の後ろ姿がある。そこで初めてこの家族の絆に頷けるようになるわけです。
沖縄というのもいいですね。ありのままで生きたい願いの中に生まれるパイパティローマ伝説。ラストにそこに舟を出す夫婦と家族の別れがいいわけです。これはただの波照間に移住しているというオチですが、この伝説やオケヤアカハチ伝説と父の思想と繋げるあたりはいいですね。沖縄ってのはやさしいなんてイメージがありますが、それは仲間と見てくれているからで、人頭税などやリゾートの形骸化などからいまでも資本や国に対する反体制がある地域であります。選挙などでもよく自民党が負けていますね。著者のここの持って行き所はかなり好感でした。いい設定を作ってくれたと思います。あくまで設定としての左翼思想ですが、これもよくもってきたと思います。今はイデオロギーなんて死んだといわれる時代ですが、私にはこの戦後かなりたった日本に一石を投じる、または地域格差に悩んだり、いかに生きるかむずかしい時代の指針に少なからず一翼を担うことができるのはないかと思います。いい物語ですね。
最後に、こちらを読んだら完璧もう映画は見ないほうがいいですよ。

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奥田英朗「サウスバウンド」

奥田英朗著 「サウスバウンド」を読む。
このフレーズにシビれた。
 二郎。前にも言ったが、おとうさんを見習うな。おとうさんは少し極端だからな。けれど卑怯な大人にだけはなるな…

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