- 2009/01/30 23:59
- 映画

さびしんぼう [DVD]
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1985年。大林宣彦監督作品。尾道三部作の三作目。原作は山中亘の「なんだかへんて子」で、「転校生>」と同じタッグとなります。主演は尾美としのり。尾道三部作では常に中心で、象徴的な存在ですね。ヒロイン富田靖子。本作が出世作ということになりますね。清貧な女子高生と幽霊のような写真の一人二役が好演です。物語の鍵を握るキーパーソンとして藤田弓子母さん、その他小林稔侍、佐藤允、根岸季衣、岸部一徳、峰岸徹、入江若葉。樹木希林と小林聡美は親子役には似すぎてちょっと恐いです。
物語はファンタジックな恋愛物語。人を愛するという大テーマがあって、ファンタジックな設定の上に青春劇を乗っけた、というのが適当ですかね。とにかく目に付くのは映画の出来の良さ。とりわけ今回は前々作「転校生」と比べると物語重視の傾向。といっても青春の物語としては決して珍しくない結論。それでもこの映画がすごいのはその物語の伝え方です。まず言えるのは懐の深さ。この映画はどの角度からも見れるんですね。主人公とさびしんぼう、それと本当のさびしんぼう、お母さん、お父さん。それぞれとの関わりがとても伝わってきます。そのからくりは当然写真から出てきたさびしんぼう。母の青春としてのさびしんぼうと触れ合うことによって、人を知る。母を知る。そのことが実物のさびしんぼう、父を知ることにも繋がっていく訳ですね。その繋がりがあるから、私たちはどの視点からでもこの物語を見る事が出ます。どの登場人物からみても主観的に共感できたはずです。そして、それは人を愛すること、青春に繋がる。こういうわけです。あの写真のさびしんぼうの台詞を母に言わせたら、ただの駄作。でも、あそこをちょっと変えただけでこれだけ見れる物語になるのですからすごいです。現在の時間と母の青春時代の繋げる事で、時空的な幅も利かせることもとてもいい。ファンタジーのいいところですね。確かに母を知ることは親近相姦的な向きがありますが。そうは見ないほうがいいでしょう。あくまで、心の触れ合いです。世界はすべて親兄弟から始まる、違いますでしょうか。
そして前編に渡るショパンの「別れの曲」。ピアノエチュード第3番。もとは人の別れの曲ではなかったらしいのですが、もう知る人ぞ知る名曲ですね。私の年代だと101回目のプロポーズなんですが、みなさんどうでしょう。あと、中学の下校を知らせる音楽でもありましたね。まぁそんなショパンの愛の半生を物語前編に生き渡らせたところにも作りの上手さを感じます。隠れたテーマで輪廻もありましたね。とても深みを感じさせます。もちろんロケ地の尾道。「転校生」では、尾道自体が主役という風情でしたが、今回は見事なスパイスでした。あの積雪の尾道はとても良かったですね。恐らく狙って撮ったものではないようでしたが、しっかり使ってきましたね。テーマ、展開、物語、音楽、ロケ地、もちろん演技も含めてとても見るべきものが多い映画です。とりわけ「転校生」が映画そのものの質、特にいかに撮るかというテクニカルな面で秀でていたのに対して、こちらは物語の質を追った作品と言えるかもしれません。それも単純に「同級生」をレベルアップしようとしたのではなくて、あくまで双璧というような立場で物語の質を重視したのがマルです。大林監督が自ら渾身の作品というだけある、非常にレベルの高い作品。青春物語なんて何時の時代もそこらに散らばっていますが、その作品たちがまるでこの映画を真似たようです。
最後に余談。この映画のヒロインは最初は山口百恵がやる予定だったらしいですね。どうして断ったか知りませんが、得てしてこういう配役変更は上手くいくことが多いですね。山口百恵のさびしんぼうなんて、今となっては想像もつきません。
評価 ★★★★★
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