- 2009/02/27 23:59
- 映画

となり町戦争 [DVD]
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2006年。三崎亜紀の原作小説を渡辺謙作監督が映画化。三崎亜紀さんは実は男性なのだとのこと。公式HPをみるとなるほど男の子ですね。本作で小説すばる新人賞を受賞、直木賞候補にもなったとのこと。監督とともに作品にお目にかかるのは初でした。
主演は江口洋介。元祖ロン毛ですね。「101回目のプロポーズ」がなつかしい。「白い巨塔」などTVドラマのほうが印象が強い印象で、振り返ると「スワロウテイル」以来彼の出演作をみていないことに気づきました。ヒロインが原田知世。いうまでもない角川三人娘の一人。デビュー作では奇跡的な純白さを前面に押し出しておりました。40代とは思えない美しさでございます。その他出演は瑛太、岩松了など。余貴美子さんはかろうじて原形を留めておりましたね。パッと見わかりません。
物語は題のとおり戦争のお話。といっても戦車や兵器の類は出て来ず、戦闘シーンというものもありません。描いているのは人間ドラマです。シーンは常に静かでセリフ問答を聞くのが展開の基本。タイトルからエンタメ色を期待していた方は拍子抜けしたでしょうが、私としてはむしろ期待通りの展開でとても満足いってます。このお話は鋭く、人が避けるようなところを抉っているのです。
テーマは、自分の知らないところで大事なことが起こっていて、しかもそれは自分とは無関係ではない、ということ。もうちょっと綺麗な言葉で説明したいんですが、村上春樹の「羊をめぐる冒険」をお読みになった方なら察しが付くかと。例えば、私たちは高度な社会で生活しているという自覚があります。情報も何もかも正確に素早く手に入る。その「はず」。そして、私たちに不利益な情報は実は規制が掛かっている、なんてことは考えない。実はそうじゃないんだよっていうのがこの映画の狙い。それを伝えるための一番のギャップを作るために戦争を使っている。手段としての戦争なんですね。このあたりは高橋しん「最終兵器彼女」を思わせる作りです。
見えないところで繰り広げられる戦争。言うなれば、わたしたちがニュースで「どことどこが戦争をしています。」と聞くような実感が湧かないところから、少しずつ戦争に関わっていく展開。そこに浮かび上がるのは、その実感のなさ。そして、それらとのギャップ。職場の同僚が死に、自分を助けてくれた人が死ぬ。そこで自分が犯していた罪を知る。日本語には「クサイものには蓋をしろ」とか「対岸の火事」などという見事な表現がありますが、ある局面において知らない振りをするというのはそもそも人間が自分を守る防衛本能として備わっているものであったります。先の私たちの考えがすばらしくない「はず」がない、という考えも同じです。しかし、恐しいことにそれが理論化すると、自分たちを守るためには戦争をしても(=人を傷つけても)仕方がないと思考が進んで落ち着くことになってしまいます。それは道徳ではなく利得です。そこからの発想の転換が重要で、私たちの背中でもしかしたら銃を突きつけている人間がいるかも知れないこと、私たち親兄弟、友人、愛する人からさらに世界を拡げていく、という想像力だと思われます。例え、無理だと思えてもですね。そのことが、ラストの江口のセリフに集約されるわけです。
映画の方は、そのテーマをよくセリフでしゃべらせていましたので、大分判りやすいつくりだったと思います。それでもテーマは充分崇高で、それでいてしっかりと物語の持つ個性とテーマを理解して表現していたと思います。残念だったのは、もう少し2人の愛とテーマを関連付けてほしかったこと。あれじゃ誰でも良かったみたいな話になりそうだったので。ただそれ以外は完璧な物語でした。非常によく組み立てられていましたね。冒頭の駅でのキャッチボールとか、ラストのバルーンが上がるところなどけっこう冴えていましたね。あとは原田知世が首を曲げるときのあの効果音は全く必要なかったですね。見ている人はあれでつまらないコメディと勘違いしかねません。もしこの映画をコメディと見たら最悪に詰まらない映画と思われるでしょうから。
最後にロケ地。どこかなとずっと見ていたんですが、愛媛の東温市と大洲市を中心にしているとのこと。大洲は遍路でいったので分かるんですが、東温市のイメージが湧かず。どうも川内町とどこかが合併したとか。それならわかる。そういえば平成の大合併なんてありましたが、結構各自治体は合併するのにどこが主導権をとるかで結構揉めているところありましたね。戦争なんて理由は様々、ですか。
評価 ★★★★☆
関連リンク
映画のロケ地へGo−ルイン!-となり町戦争-ロケーションジャパン