- 2009/03/14 00:00
- 映画

さくら ‾夢よ、咲け。 [VHS]
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1993年。中村儀朋著「さくら道」を原作に、「遠き落日」「大河の一滴」の神山征二郎監督がメガホンを取った作品。主演は篠田三郎。これこそまさに燻し銀。今のところクローズアップされることはないですが、偶然どこかで引っかかれば当然評価されるに違いない方ですね。ヒロインは田中好子。その他鈴木ヒロミツ、故・河原崎長一郎、樹木希林、菅井きん、小野武彦、片桐夕子、山本圭ととてつもない方々がお集まりになっています。
舞台は岐阜は奥飛騨、荘川村。現在は高山市になっている地。そこにある荘川桜の生命力と桜に関わる人の心に魅せられた国鉄バスの車掌が、自分が業務する名古屋−金沢のバス路線の道に桜を植えて太平洋と日本海を桜で結ぼうと発起し、奮闘するというお話。こう聞くと実しやかに聞こえませんか。この話は実在した佐藤良二氏をモデルにしているお話です。
物語は佐藤氏の足跡を丹念に辿っていくもので、特別のインパクトのある展開はありません。ですが、伝えたいことをきちんと伝えることが出来る仕上がりです。物語の進め方にぶれがなくて、一貫性がある。全体の色もしっかり統一されていて、ゆえにとても強い共感性と感動が得られる作品に仕上がっていると思います。もちろん重要なのが桜で、主人公が桜に死生を重ね合わせ、あたかもその心が桜にのりうつったかのように、すなわちアミニズム的な存在を得る展開はベタでもとても優秀です。実話を基にしているからなのか、出演者を初め制作者側の物語に対する真摯さと本気度がしっかり画面から伝わってきます。職場や家族への軋轢、病に倒れながら奮する姿は確かにありがちですが、そのありがちな中でとても質が高い映画になっています。言わば本格派の傑作、ベタ物語の傑作であります。桜を題材にした映画って結構あると思うのですが、この映画が今まで見た中で一番イイですね。
その物語にとてもいい色を付けたのがロケ地。荘川桜がある地区は豪雪地帯で知られる奥飛騨、いわゆる飛騨高山で、あの色彩の薄れた雰囲気がとても物語に合っていました。隣接する地域にはあの世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」があるところですね。また、実際に佐藤氏が桜を植えた日本海から太平洋を結ぶ道も実在していて、毎年桜の咲く時期にさくら道国際ネイチャーランというマラソン大会が催されているそうです。何でも白川郷と桜を目当てに外国人の方も多数訪れるそうです。外国でも評価されている白川郷の集落の美しさに、日本を代表する桜の共演。そして桜に込められた死生観。これぞまさに日本映画の極地といってもいい映画。それにしてもこういう話を聞くにつけ、何でこういう映画が評価に値されないのか疑問です。外国の方ですらここの桜を聞きつけ訪れるというのに。こういう映画は話題性がないとか、偉人じゃないとかで片付けられてしまうんですよね。物的価値に目を向けて、良いものを評価できないこの体質に辟易します。こういうのをアカデミーにもっていけば絶対海外に評価されるのに。
今年は桜を見る前にこの映画を。もとい、DVD化されていませんので入手は大変かと思われますが。でも、これみたら毎年の桜がさらに楽しみになりますよ。
評価 ★★★★★
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