- 2011/11/12 11:50
- 映画
1989年。「シコふんじゃった。」「それでもボクはやってない」の周防正行監督作品。それまで伊丹十三の元で制作に携わっていたようですが、こちらが監督として日の目を見た作品ですね。原作は岡野玲子の原作コミック。出演はシブガキ隊モックンこと本木雅弘、鈴木保奈美、彦麻呂、田口浩正、竹中直人など周防映画では馴染みの面子など。アイドル時代の彦麻呂は必見。やせています。田口浩正は今では方々でよく見ますが、こちらがデビュー作だったんですね。そして鈴木保奈美。一線級のトレンディ女優ですね。「カンチ」なんて、若い人知ってるかな。あの頃は確実に旬でしたよね。今はすっかり家に籠っているみたいですが、この人今でも女優やってたらどうなってましたかね。想像するとちょっとおぞましいです。という突っ込みどこ満載のキャスティングでございます。
寺の息子が寺で修行するお話。周防監督の作品はこれで4作目(「Shall We」「それでも−」「シコ−」「ファンシイ」の順)なんですが、それぞれ題材がお寺、相撲、社交ダンス、痴漢冤罪と、名前くらいは知ってるけれど、中身は知らないというものを扱って、その「how to」と「あなたの知らない世界」を伝えるという、選び方にオリジナリティがあっていいですね。そして、その題材がもつそれぞれの「美」を扱っている。改めてみてみると、周防監督の「美的意識」には筋が通っていますね。
それとこの映画で目を惹くのは展開。映画のクライマックスである法戦(いわゆる禅問答、曹洞宗では法戦というようですね)への展開構成がよいです。映画で語らえたエピソードは散漫せずにすべてがしっかりとあの法戦に集約されていました。出演者のキャラクター、演出、ストーリーとかなりいいですね。個人的には「シコ−」より映画自体の出来はよいかと思います。確かに粗さはありますが、向こうは無駄に綺麗な印象です。シコがアカデミーを獲った作品ですが、これは相撲のほうが禅よりポピュラーだったからかなと思っています。コメディとしてもこちら「ファンシイ−」のほうが上だと思いますがね。おすすめ。そうそう、ロケ地は曹洞宗というから永平寺かと思ったんですが、金沢にある大乗寺というところらしく。映画完成後にそのコメディっぷりにロケ地として貸し出したことを後悔したとか何とか。まぁ、そうなんでしょうね。
百尺竿頭進一歩。百尺、即ち約30mの竿の頭、つまりそのてっぺんに上って、さらに一歩を進めること。高いのはもちろん、柔な竿の上で、さらにそこから進めるはずもない一歩を踏み出す。あくまで例え話ですがね(旧日本軍はこの語を借りて戦わせたらしいですが)、高い位になっても奢るな、努力を忘れるな等々、様々な側面から価値のある言葉ですね。仏教の含蓄は、その言葉通りのでなくても、実際の生活でも何度となくお会いするテーマですね。映画でも主人公の照らし合わせ、そして映画自体のテーマとして上手く機能しています。こういう類の教訓が私たちの実生活に無意識に擦り込まれているのを感じますね。映画では「あるがまま」という回答がなされていました。落ちるも善し、ですかね。私は出来たら登らないで下から眺めていたいですね。高いものは眺めていることが好きなので。もし登ったとしたら、そこからはさらにその上を眺めたいと思います。下を見るのはちょっと。怖いというのもありますが、見下すのはちょっと。
評価 ★★★★☆
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