
老人と海 [VHS]
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1990年。ジャン・ユーカンマン監督のノンフィクション・ドキュメンタリー。監督は日米に拠点を置いて活動している方で、他にも「映画日本国憲法」「シャムスキー9.11」などの日本映画を撮影されています。今回この映画は上映初年から20年を経てディレクターズ・カット版としてこの夏に再上映を果たしたのですが、その企画制作を担当する山上徹二郎ディレクターとずっとタッグを組んで活動しているようです。
舞台は沖縄、八重山諸島の与那国島。日本最西端の碑があり、台湾に隣接するいわゆる辺境の島。旅人にとっては目指すべき島のひとつですね。出演は糸数繁と与那国に住む島人たち。糸数氏はいわゆる海人で、オジィ。ノンフィクションですから、もちろん普通の方です。そのオジイが巨大カジキマグロを釣り上げようと格闘する物語です。アーネスト・フェミングウェイがノーベル文学賞をとった同名小説「老人と海」の舞台のキューバと丁度地球を反対にした同緯度にある与那国島であることから、カジキと格闘する小説をヒントに作り上げたドキュメンタリーというのが本作になります。
映画はオジイの漁の光景を中心にハーリーなど島の行事などを織り交ぜていて、ドキュメンタリーらしく映像と小室等の音楽だけで展開。インタビューはあっても勿論せりふなどはなし。もっとも島ことばがわからなくて字幕がないと理解できないといったもの。与那国にスポットをあてているものの、いわゆる沖縄的な映像も極力排除されて、沖縄とか辺境とかとは関係のない、オジイのような海人や島人の生活が描かれる。ひたすらにオジイを追いかける映像は、まさにオジイの人生そのものがこの映画のテーマ。ラストで巨大カジキを釣るわけですがその御年82とのこと。それを昔ながらのサバニ(もっとも古来船ではありませんが)の子舟で釣り上げる様はなかなか見応えがあります。そして楽しくて思わず踊っちゃったというラスト。神というとおこがましいですが、自分の力以上に対する畏怖の念、謙虚さ。もちろん、都会人がオジィのように生きることができるか、そんな簡単なことではない(むしろ無理といったほうが簡単、あれは島人、オジィなりの人生)なわけですが、それでも人生とは何か、というところまで深く掘り下げて私たちに提示してくれる映画となっています。すばらしい。
20年たった今再上映をしたのは、この映画がもっているようなシンプルで素朴ながら生き生きしているオジイのような生き方が改めて見直されているという現代のニーズに合致するというところでしょうか。そして主人公の糸数オジィはこの映画が上映される1ヶ月ほど前に海で還らぬ人となってしまったとのこと。ヘミングウェイの小説を読んだ方なら分かると思いますが、小説のとおりとなってしまったオジィ。オジィの死と小説とこの映画の因果があるかどうかわかりませんが、改めてオジィに敬意を。個人的には数年前から物色していた映画だったのですが、見る機会がなく、今回の再上映でそれがかないました。これにも感謝しておきましょう。そして老人と海の読書感想文の検索で来られた学生さん、ネットで夏休みの宿題を済ませるのは結構ですが、せめてこの映画を見てみましょうよと。
評価 ★★★★☆
- 新しい: 茜食堂だより9月号 茜食堂のお引越し
- 古い: ビルマの竪琴(1985)