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砂の女/安部公房


砂の女 (新潮文庫)

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1962年初版。芥川賞作家安部公房著。三島由紀夫とならんで第二次戦後派作家に名を連ねた文豪。「壁」「榎本武揚」についでの3作目の安部作品とそれほど読み込んでいないのですが、本当に好きな作家の一人。それならもっと読めよといわれそうですが、あの世界観は続けて読むのは毒過ぎますね。ふとしたときにあの世界観に入って耽る。そして驚愕する。それが私なりの安部公房さんとの付き合い方。いい薬も飲みすぎると毒になる、そんなところです。とにもかくにも安部さん社会を暴ききる視点は本当にすばらしくて、鋭利でどっぷりはまると人生を見失うそうになります。安部氏の芸術活動は文学というジャンルに囚われない、一職業としての作家を超えたまさに巨星ですね。60年から70年代の仕事人の代表格のようなものでしょうか。個人的には寺山修司と安部公房。この二人は私にとっての巨星です。

というわけで改めて本作。私が着目したのは物語に描かれていた田舎という世界。男はひょんなことから囚われの身になってしまいますが、作品に出てくる集落の人たちがおそろしい。何がこわいかというと、女との会話から徐々に真相が明らかになってくるわけですが、やっていることはおそろしいのに、あっけらかんとしているところ。実際に出てくる人々はまったくこわい雰囲気はないただの田舎の人々で、いわゆる田舎のおっちゃんという体なのですが、何の疑いもなくそれ(軟禁)をしている。その理由が田舎のしきたりであったり、社会構図であったりするのですが、まるでしたり顔なんです。いまは東京に戻っていますが、田舎の移住を体験した身。別にこのように囚われたわけではないのですが、この田舎人の顔に遭遇したことがあります。やさしい顔をして、人をはめるのです。この町から出て行かないように。ちょっと背筋がゾクっとしました。巻末の解説にこれが日本社会の縮図だというようなことが書かれていましたが、まだこのような世界は田舎に存在しているのではないか。自分の体験を交えて、さらにこの小説の描かれた世界にリアリティを感じました。
田舎というのは理想だけではない。都会以上に美しくも厳しい世界が待ち受けている。良くも悪くも砂を掘るような世界というのが必ずあります。まだまだ移住を求める方は多いと思います。もちろんこの小説がすべてではありませんが、移住を考えている方にこの本を読むことをお勧めします。移住のためのバイブル指定。

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