
原爆の子 [DVD]
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1952年。「ふくろう」「生きたい」などの新藤兼人監督作品。御年98歳にして尚現役、自ら手掛けた映画と脚本は300にも迫るという日本映画きっての大御所であります。主演は乙羽信子。監督の奥様であります。いかんせんふるい映画で他の出演者の方の名前を存じておりませんで、分かったのは北林谷栄さんくらいですね。おばあちゃん役でつい最近の映画にも出演していた谷栄さん、この映画でもおばあちゃん役で。今年亡くなられましたね。監督とともに戦後映画の片棒をずっと担いできた名女優さんです。
舞台は戦後数年経った広島。長いキャリアを持つ監督の2作目にあたる本作は戦争映画です。瀬戸内海の島に住む被爆経験のある女性が故郷の広島を訪れて当時の友人知人を廻る。年月がたっても「ピカドン」に苦しむ人々の惨状、そしてそんな中でも見える希望の光。その2つの光と影が入り交じり綴られるヒロシマの人々の思い。脚本家として鳴らした監督としてはまだ脚本などの精度が低く、キャリアの浅さを感じますが、シンプルに心を打つ、傑出した作品だと言えると思います。
作品の背景に目を向けると、サンフランシスコ平和条約で日本が独立したのが1951年。アメリカの占領が解けた直後の制作映画。カンヌ映画祭に出品されるなど映画が高く評価される一方、今でもそうですが、原子爆弾の投下を正当化しているアメリカなどからは受賞妨害を受けたということがあったそう。それでも世界で初めて作られた反核の映画として、半世紀以上経った今でもこの映画のその輝きが失われていないのは、その描かれたヒロシマが、今でも求められているものなのだからでしょうか。
戦争を振り返る映画は数多くあって、わたしもいくつか目にしたことがありましたが、例えば特攻隊員が国のため家族のためにと華々しく散るとか。反戦というよりは反米とか。いわゆる右とか左とか、イデオロギー的なものですね。この原爆の子はそれらに属さない、広島の人々をありのままに描く、ヒューマニズムな映画なのだと思いますね。そもそも人道的なものとはそんな性格のものだと思うのですが、どうもそれを捻じ曲げる輩がいる。もっともこの映画を支援したとあるグループは素っ気ない映画になってしまったと嘆いたなんて話をしていた話を耳にしましたが、これぞ映画人新藤兼人を見せてもらったと思います。今の映画にあるようなエンターテイメントを超越した、意味のある映画。ヒューマニズムのアーティストですね。美しいとかではなくて、すばらしい。職業としてよりは生き方そのもの。
白黒に映える広島の風景も見所。カメラワークもいいです。記録的にも価値があります。
評価 ★★★★☆
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